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2009.11/16 [Mon]
小国デンマークからの産業革命・上
皆さんこんにちは
いかがお過ごしですか


飛行機が高度を下げ、着陸態勢になると、機内の窓から沿岸に建つ風車が目に入ってきます。まるで来訪者に挨拶するかのようにゆっくりと羽根を回す姿は、現在のデンマークを象徴する風景でもあります。この国の国土面積は日本のおよそ10分の1(グリーンランドを除く)で、狭い国土に日本のおよそ倍、約320万キロワットの出力の風力発電機が運転しています。現在、デンマークで使う電気エネルギーの20%が風力発電によるものです。人口550万人の国で、風力発電産業の従事者は約3万人に及ぶといいます。風力発電機はデンマークの輸出額の7%を占め、最大の輸出工業品でもあります。
小国の風力産業を支えてきたのが、国を挙げて築いた開発体制だといいます。その知見を求めて、世界各地の風力発電機メーカーが首都コペンハーゲンに集まってきます。デンマーク工科大学(DTU)の風力発電機の実験場で、ブレード(羽根)の耐久性試験が続けられています(コペンハーゲン郊外)。
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小国デンマークからの産業革命・上(産業部記者 宇野沢晋一郎)
【日経産業新聞,2009/11/16】
「この前は、中国の風力発電機会社が来ていました。ブレード(羽根)の素材として竹を使う実験を一緒にしましたよ」。コペンハーゲンの郊外にあるデンマーク工科大学(DTU)の大学院生は、ここが最新技術の発信拠点とばかりに誇らしげに語ります。構内の風力発電機の試験場には中国やインドなど世界各地から大手メーカーが訪れ、ブレード強度などの実験をしています。風力発電機技術の世界的な拠点となったデンマーク工科大学(DTU)ですが、1954年の開設当初は原子力の研究拠点の位置づけでした。1980年代にはいって、風向きが変わります。原子力利用に反発する声が国内で高まり、1985年に国が原発開発の方針を転換します。デンマーク工科大学(DTU)は次なる自前のエネルギー源として、デンマークの農家が古くから使っていた風車に可能性を探ります。
この戦略が当たって、デンマークの方針転換から1年後の1986年にチェルノブイリで原発事故が発生しました。原発の利用拡大を懸念する声は欧州全体に広がります。デンマークはその間、国内で大型風力発電機の開発を急ピッチで進め、国内市場をテコに国内メーカーを育成しました。原発に変わりうる新たなエネルギー源として、風力発電機の市場は90年代後半に欧州で急拡大しました。技術を蓄積したデンマーク最大手のヴェスタスは、一気に世界シェアトップに上り詰めました。
欧州が中心だった風力発電の市場でデンマーク企業は存在感を示し続けてきましたが、その市場が世界規模に拡大し、その限界も浮かび上がっています。海外市場が年30〜40%増の爆発的な伸びを示すなか、独シーメンスや米ゼネラル・エレクトリック(GE)など巨大資本が参入して、競争は激化しました。資本力の乏しいヴェスタスのシェアは少しずつ低下して、市場ができてからずっと維持するトップの座もGEの追い上げの前に、もはや風前の灯火です。デンマーク風力発電協会によると、昨秋の金融危機の影響などもあり、2年の間に風力発電機産業の雇用が2000人程度失われたということです。
日本であれば大騒ぎになりそうな主力産業の斜陽ですが、それでも、デンマーク投資庁のオーレ・フリジスメンソン・ディレクターは「再生可能エネルギー源が1つじゃダメ。風力だけなんてナンセンス」と事もなげにいいます。彼は風力を補うエネルギー産業としてバイオマス(生物資源)を挙げています。風力発電機の左には、煙をモクモクと吹き出している大型発電所が2つあります。1つは石炭を使った発電所ですが、もう1つは燃料の7割に木質ペレットを使うバイオマス中心の発電所であり、電能力が50万キロワットを超える大型発電所で、排熱も暖房など向けエネルギーとして使うことで、エネルギー使用効率は80%を超えるといいます。
木質ペレットは国内だけでなく、バルト諸国やドイツ、スウェーデンからも集めます。「バイオマスを中心にすえた大型発電所は世界でもまだ少ない。今はより燃料を減らすため、運転の効率改善を進めている」(運転するDONGエナジーの担当者)。11月中にはバイオマスから液体燃料などを作る大規模工場も立ち上がります。先端技術を先んじて実用化し、新たな産業につながるノウハウを国内に蓄積するということです。バイオマスと風力を組みあわせ、2025年には電力消費の半分を再生可能エネルギーでまかなう計画です。デンマークは日量約30万バレルを産出する北海油田を持つ「産油国」でもあります。自国の化石燃料の使用が減るほど、虎の子の原油を輸出に回せます。いまも生産した原油のおよそ半分はオランダなど周辺国に販売しています。デンマークの化石燃料の輸出額は年間50億ユーロ(約7000億円)で、自らは自然エネルギーを可能な限り使い、価格が高騰する化石燃料を可能な限り海外に売って外貨を稼ぐという政策には、穏やかに回る風車に象徴される環境アピールのその裏に、したたかなそろばん勘定も垣間見えます。
「低CO2モデルに早く転換した国が、繁栄を得ることができる」——。12月の気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)で議長を務める予定のコニー・ヘデゴー大臣の呼びかけです。彼女の肩書きは気候変動相と省略されることが多いのですが、兼任するエネルギー相としての発言として聞くと、また違った意味合いに聞こえてきます。“低CO2モデル”の模索として柔軟な取り組みに学ぶところは大きいと思います。
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いかがお過ごしですか
飛行機が高度を下げ、着陸態勢になると、機内の窓から沿岸に建つ風車が目に入ってきます。まるで来訪者に挨拶するかのようにゆっくりと羽根を回す姿は、現在のデンマークを象徴する風景でもあります。この国の国土面積は日本のおよそ10分の1(グリーンランドを除く)で、狭い国土に日本のおよそ倍、約320万キロワットの出力の風力発電機が運転しています。現在、デンマークで使う電気エネルギーの20%が風力発電によるものです。人口550万人の国で、風力発電産業の従事者は約3万人に及ぶといいます。風力発電機はデンマークの輸出額の7%を占め、最大の輸出工業品でもあります。
小国の風力産業を支えてきたのが、国を挙げて築いた開発体制だといいます。その知見を求めて、世界各地の風力発電機メーカーが首都コペンハーゲンに集まってきます。デンマーク工科大学(DTU)の風力発電機の実験場で、ブレード(羽根)の耐久性試験が続けられています(コペンハーゲン郊外)。
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小国デンマークからの産業革命・上(産業部記者 宇野沢晋一郎)
【日経産業新聞,2009/11/16】
「この前は、中国の風力発電機会社が来ていました。ブレード(羽根)の素材として竹を使う実験を一緒にしましたよ」。コペンハーゲンの郊外にあるデンマーク工科大学(DTU)の大学院生は、ここが最新技術の発信拠点とばかりに誇らしげに語ります。構内の風力発電機の試験場には中国やインドなど世界各地から大手メーカーが訪れ、ブレード強度などの実験をしています。風力発電機技術の世界的な拠点となったデンマーク工科大学(DTU)ですが、1954年の開設当初は原子力の研究拠点の位置づけでした。1980年代にはいって、風向きが変わります。原子力利用に反発する声が国内で高まり、1985年に国が原発開発の方針を転換します。デンマーク工科大学(DTU)は次なる自前のエネルギー源として、デンマークの農家が古くから使っていた風車に可能性を探ります。
この戦略が当たって、デンマークの方針転換から1年後の1986年にチェルノブイリで原発事故が発生しました。原発の利用拡大を懸念する声は欧州全体に広がります。デンマークはその間、国内で大型風力発電機の開発を急ピッチで進め、国内市場をテコに国内メーカーを育成しました。原発に変わりうる新たなエネルギー源として、風力発電機の市場は90年代後半に欧州で急拡大しました。技術を蓄積したデンマーク最大手のヴェスタスは、一気に世界シェアトップに上り詰めました。
欧州が中心だった風力発電の市場でデンマーク企業は存在感を示し続けてきましたが、その市場が世界規模に拡大し、その限界も浮かび上がっています。海外市場が年30〜40%増の爆発的な伸びを示すなか、独シーメンスや米ゼネラル・エレクトリック(GE)など巨大資本が参入して、競争は激化しました。資本力の乏しいヴェスタスのシェアは少しずつ低下して、市場ができてからずっと維持するトップの座もGEの追い上げの前に、もはや風前の灯火です。デンマーク風力発電協会によると、昨秋の金融危機の影響などもあり、2年の間に風力発電機産業の雇用が2000人程度失われたということです。
日本であれば大騒ぎになりそうな主力産業の斜陽ですが、それでも、デンマーク投資庁のオーレ・フリジスメンソン・ディレクターは「再生可能エネルギー源が1つじゃダメ。風力だけなんてナンセンス」と事もなげにいいます。彼は風力を補うエネルギー産業としてバイオマス(生物資源)を挙げています。風力発電機の左には、煙をモクモクと吹き出している大型発電所が2つあります。1つは石炭を使った発電所ですが、もう1つは燃料の7割に木質ペレットを使うバイオマス中心の発電所であり、電能力が50万キロワットを超える大型発電所で、排熱も暖房など向けエネルギーとして使うことで、エネルギー使用効率は80%を超えるといいます。
木質ペレットは国内だけでなく、バルト諸国やドイツ、スウェーデンからも集めます。「バイオマスを中心にすえた大型発電所は世界でもまだ少ない。今はより燃料を減らすため、運転の効率改善を進めている」(運転するDONGエナジーの担当者)。11月中にはバイオマスから液体燃料などを作る大規模工場も立ち上がります。先端技術を先んじて実用化し、新たな産業につながるノウハウを国内に蓄積するということです。バイオマスと風力を組みあわせ、2025年には電力消費の半分を再生可能エネルギーでまかなう計画です。デンマークは日量約30万バレルを産出する北海油田を持つ「産油国」でもあります。自国の化石燃料の使用が減るほど、虎の子の原油を輸出に回せます。いまも生産した原油のおよそ半分はオランダなど周辺国に販売しています。デンマークの化石燃料の輸出額は年間50億ユーロ(約7000億円)で、自らは自然エネルギーを可能な限り使い、価格が高騰する化石燃料を可能な限り海外に売って外貨を稼ぐという政策には、穏やかに回る風車に象徴される環境アピールのその裏に、したたかなそろばん勘定も垣間見えます。
「低CO2モデルに早く転換した国が、繁栄を得ることができる」——。12月の気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)で議長を務める予定のコニー・ヘデゴー大臣の呼びかけです。彼女の肩書きは気候変動相と省略されることが多いのですが、兼任するエネルギー相としての発言として聞くと、また違った意味合いに聞こえてきます。“低CO2モデル”の模索として柔軟な取り組みに学ぶところは大きいと思います。
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